2015年6月13日土曜日

『月刊群雛 2015年06月号』レビュー・遅れて大変申し訳ありません。



 遅れてごめんなさいですー。「鉄研でいず!」という小説連載してて、レビュー後回しにしてしまいました。大幅に遅着です。スマヌー!!





誰の手にも自由な出版を! 山本ゆうこ





 お世話になってます! なBCCKSの誕生秘話。「BCCKS」の由来、はじめて知ってなるほど、と思ったり(いや、Oを開いてCを、ってのを、「O PENをC LOSEにしちゃうんじゃ……」とすごい邪悪なことを思ってしまったのはヒミツだ(ヒドイっ) でも開いてるよね、現実にはたしかに。

 ウェブで本を作っていくというプラットフォームでは利用者としてはぶっちゃけ、パブーさんよりBCCKSさんのほうが進んでいる気がしたなあ、と思ったけど、そう思わせるにいたるところでなるほど考えてるんだなあ、と思った。さすがである。パブーもリニューアルしてほしいなあ、と思ったり。

 あと、なぜか私、BCCKSにはじめて触れた時に、「ん? どこか独特の匂いがするぞ」と思ったけど、「リクルート経営企画部」の文字を見て、「おおー!」と実はガッテンしてしまったのです。リクルートって会社はそういうところだよね、とか。

 でもほんと、土台作りだよね、開かれた出版、っていうものの今の段階は。その土台作りしてくれてるのはほんとありがたい。

 私は本を作るってのは最高のホビーの一つだと思ってるし、そのホビーとしての熟達と技量向上の先に新しい文芸があると思ってるのはわりと本気だったりする。

 そのための編集とか校正機能の捉え方とかもまたそうだよなと思う。ただ、売るとか接点を増やすってのは、今すごくでかい課題だよね。そこでISBN付与を目指すってのはホホウ、と思った。

 なんというか、読者のところに作者の本がうまくプロモ出来て届くために何が必要かと思うと、個人的にはSNSとかでの作者の露出上げてく方向と、現代的に本づくりの作業がどこでもできて、内容に集中できる環境ってのがあると思うのね。

 そういうところわかってると思うので、BCCKSさんの今後にも期待。




#あ、うちの「鉄研でいず!」作中の高校鉄道研究部、部誌をBCCKSで発行してることにしてます。それって教育的にもいいと思うし。






ない 川畑愛





 ない、けど、あるんだよね、と思いながら読んだ。というかすごく親近感持ってしまう心象を感じた。

 人間の成長ってのは、諦めていくことでもあるんだよね。でも諦めていく中で、戦い方を覚えていく。そういう後退戦を戦うのがプロの大人だし、その後退戦の中から、まだ諦めるというほどずるくも慣れず、かと言って信じれるというほど無邪気でもいられない、っていう時期が私にもあった。そこをそれを過ぎた時から再現する、っていうテーマかな、と思った。ちょっぴり年齢上のジュブナイルというか。そういう詩だと思う。




 #ちなみに青海玻洞さんにこの前ハングアウトで「日本の詩というものは翻訳詩から生まれたんだよー」と私的に知識不足を指摘されてあうう……。でも、素人というか知らない視点から見ても、詩って面白いよね。知ることでまた面白いだろうけど。





荒神、再臨セリ。 見星昌嶺


 おおっ、冒頭からハリウッド系あるいはメタルギアソリッドシリーズっぽい航空アクションの期待がっ。

 で、期待を裏切らずに航空アクションやってくれてるのね。そして前進翼とか、ホントおじさんうれしいぞ! ってな感じ。
「荒神」の正体もいい意味で期待を裏切られて、期待を上回って、期待通りですごく良い。いいねえ。SFの香りもしていい。素敵である。うむ、エースコンバットシリーズにもこのエピソード入れられないだろうか。(いやゲームの話ばっかりだな……)どこかANUBISも思い出した。いいアイディアなので、ぜひ展開して欲しいのである。「インディージョーンズ」的なところもあるし。

 ぐいっとこの世界に引き込まれるのもまた手慣れた筆致。いいねえ。だれかメカに強い絵師さんがついて、さらにこの世界が展開されてくれる、とすごく読んでさらに幸せになれると思う。すごく素敵。カッコイイ。最高っす。




 インタビューで持ってるシリーズとして「憑依兵器シリーズ」というのがあるらしい。うぐぐ、読みてえ……。これ、ファン付きそうな気がする。うんうん、好みはバッチリ私も頷くところです。あえて語らずなんて言わなくていいと思うけどなあ。こういうの、すごく好き。





運命 竹島八百富


 オープニングがトレンディな恋愛ものの感じ。うんうん、中間小説っぽくてドラマっぽくていいね、と思ってたら、

 えええええええええ!!!!!!!

 なんですかこれ!!!!




 えええええええ!!!!




(気を取り直して)

 ……う、うん、私もバッサリ斬られたよ……。




 ほんと、すごい展開するなあ。というか、いい意味で「ヒドイッ」というか、「容赦なく」というか。




 この人が、普通の恋愛モノを描くはずがないと思ったけど、ほんと、このヒトの個性というには個性的すぎて、すごいよね。

 確かに運命であるけど、この字数で落差がすごい。

 物語の魅せる要素は落差でもあるので、正しいけど……。絶句しちゃったよ。すごい。





ギソウクラブ 晴海まどか/イラスト 合川幸希


 だいたい、この人の学園モノの青春ドラマをキャッキャウフフと呼んで、影響されてワタクシも「鉄道研究部」なんて男臭い部活を舞台にして学園モノ書きたくなってしまって「鉄研でいず!」なんて書いてる私に言わせると!

 ほんと、どんどん恐れず挑戦していくなあ、と、もはやカッコイイの領域なんですよ。学園モノを書く姿勢として。
 第一、大阪弁という「物語界の最大の鬼門」にもどーんとつっこんでいっちゃうし、今回も「キター!」と思わされる定番展開を再解釈しちゃうし。

 今回は特に楽しんで書いてる感じがするかな。キャラクターが自分でどんどん話を進めていくような推進力が前面というか。ぐいぐいいって、読む方もスイスイ読める。ほんと、物語で一番いいところ。

 でも今回、最後辺りにふっと影がかかってくるのが、ただキャラが引っ張るだけじゃない展開で、うむ、これもちゃんと計算ずくで狙われたのであろうな、と思ったのである(しまった、うちのキャラが出てきちゃったよ)。

 個人的には、そこで少し舵を切ったかな、という気もする。これについては次回の展開で答え合わせかな、という感じ。実はうちもそこで悩んでるんだよね。

 

 イラストも風味がいい。素敵。文芸雑誌らしいよね。品格があって大変良い。





念力少年 くろま


 おお! これもSFだっ。一瞬エースコンバットシリーズのneucomという未来企業のイメージを思い出した。古いところだと、「AKIRA」とか「攻殻機動隊」かな。でも全体的に水彩で描かれたような淡い筆致なのがまた個性だよね。

 シンプルだけど、目的を達しきった感じ。読みやすくてカッコイイ話という目的を達成してると思う。ううむ、これはなにかコミックとかでも読んでみたい気がするぞ。




恋、未満。 神楽坂らせん


 うふふふふふふふふ(謎)。

 うん、淡くていい感じ。すごく淡くて、物語だても夏色な感じ。すごく素敵。いやいや、恥ずかしいなんてことはないですよ。こういうの、私も好きだし、私も時々書いて楽しいし、読んでも楽しいから。

 だが!! 汽車とはなんであるかっ! これ、ディーゼルカー、気動車だよね(いや、いらんところに注目してる)。(#注:私の田舎、秋田でもディーゼルカーを汽車って呼んでたよー。あと機関車牽引の50系客車とか)  あと、「車両調整のために6分間停車」とはなんであるのか! ここは「時間調整」あるいは「対向列車待ち合わせのために」6分間停車するところでしょっ!(うわあ、すごくヒドイツッコミ!!)

 ……って、すごくヒドイこと書いたけど、でも物語としての完成度が高くてとてもいいから、そういうところをついいいたく、語りたくなってしまうのね。そう、問題点とか、完成度の低いものは、話を追いかけるだけで精一杯になるのでそういうツッコミとか、語りたい!ってところまで辿りつけないの。

 金属の表面を鏡面仕上げを目指せば目指すほど、寸分の狂いが目立ってしまうというか。

 でも、そういう寸分のことを気にさせてしまうほどの完成度高いのね。普通はこういうツッコミするヒトはいないと思う。ごめんねえ!

 でも、それだけ道具立てとしての鉄道が素敵に書かれてて嬉しい。うんうん、この鉄道あそこらへんかな、と想像して、そこで少女の小さな旅がこんなふうに繰り広げられてると思うと、鉄道マニアとしてはすごく嬉しいのね。その少女が出会う少年との話がまたなんとも滋味があってよい。

 なんか、ジブリがああなっちゃったあとで、こういう世界をどっかアニメにしてくんないかな、と思う。すごく素敵なアニメになると思うのね。まさに風味絶佳である。

 でも、この汽車はキハ40系かな。ボックスシートあったりするし。海のそば走るというと……。という、すごく旅情もかき立てられて素敵。

 こういうの、すごく好きなんだよね。というか、ほんと、読んだあといろいろ語りたくなる楽しい話。作品ってのはそういう要素も重要だよね。それをこの作品は満たしてる。

 

ニつの時代の『罪と罰』 有坂汀


 うーん、即効性のある答えはたしかにないよね。

『罪と罰』のドラマの比較の評論なんだけど、ううむ。

 評論についてさらに評論を書くには、長いこと頭作ってないからうまく言えないけど、「恐ロシア」と言われると、漱石が「恐露病」と呼んだのを思い出すのね。ロシア文学ってのはハマる人はハマるし、たしかにそれだけ奥行きも深いものだと思ってる。私も何度もロシア・フォルマリズムの話を論考に使ってるし。

 でも、正直、まだここまでだと私にはあんま合わないのね。正直ごめん。テーマとしては普遍性があるものとは思うけど、ここでさらに踏み込んで掘り下げて、ロシア文学に通底する思想から、さらに普遍性のある論考に止揚できるか。その課題をどう作者が解いていくのか、そこに期待するところ。

 作者がまだ個人性と表象的なところで苦しんでいるような感じを受けた。でも、そこで肉体性というかを再獲得できれば、いろいろと課題が解けると思うのね。しんどいけど、ここが踏ん張りどころだと思う。実は私もこういう論考に凝ったことがあるんだけど、歳取ると、「まあ、そういう危機は今に始まったことじゃないからねえ」というすごく堕落した中年のおじさんになっちゃうのね。歳はとりたくないな、とも思うんだけども。とりあえず『罪と罰』機会があったら見てみよう。





井の頭cherry blossom くみ  イラスト/魅上満


 おおー! 大きく展開したなー、と思った。

 私的にはすごく大きなことだと思うロケット打ち上げのシーンがさらっと進んだのが、なるほどなーと思った。私なんか古い世代だから、打ち上げ!となるとド熱くなってしまうのね。でも、この世界だと、民間宇宙開発も進んでるし、かといって宇宙に行くのが日常化してしまうというわけでもない、すごく微妙で難しい技術水準の時代の話だもんね。

 で、この話、宇宙に行く! どーんと行く! 宇宙飛行士! という話ではないのね。

 すごく繊細で、細やかな、女子力まで高い二人の宇宙飛行士の話だもんね。そういう精神世界の話だから、私の思ってる昔からの宇宙飛行士のイメージとはかなり違ってて、むしろ私はそれがSFのディテールみたいで面白いのね。

 というわけですでにバレテルと思うけど、私自身宇宙開発マニアでもあるので、読み方は厳しいと思うんだけど、それでも、なるほどなあ、と思うところがあるのがよい。

 BL作品というものに圧倒的に先入観も知識もない私だから、そう思うのかもなんだけどね。




 イラスト、秀逸です。宇宙飛行士といえばこれ!な絵だよね。素敵。特にカラーのほうは力いっぱい描けてていい。




伝説の古寺 幸田玲


 うむむ。中間小説なんだけど、モチーフとしてシンプルに見えて、実はすごく難しいものを書いてるなー、と思った。このモチーフをドラマティックに書ききるのはなかなか骨が折れるような。私でもこれだけモチーフと道具立てを盛り込んで書ききるのはなかなかしんどいレベル。

 うーん、難しいなあ。私自身、人生で断片的にこういうシーンをいくつか経験してるからか、うまく私もまとめられないのね。

 受け取りようは人それぞれだと思うけれど、すごく難しい。




屋根まで登って 神谷衣緒


 おおー、綺麗。季節にあってるねえ。クリアな感じが凄く素敵。描き込みも素晴らしい。




 というわけで遅れてすんませんなレビューでした。ほんと、すまぬー。

 あ、スタッフさんの「あとがき」へのレビュー書いてないや……すまぬ、でも私も旅に出るので、その準備があるので、それが終わってからということで。
 結構長い旅になるんだけど、全然準備してない……ヤバイぞこれは。

0 件のコメント:

コメントを投稿