2015年11月7日土曜日

群雛文庫の創刊に(勝手に)よせて。



うひひひ、ステマステマ(いや隠れてない)

 独立系作家を応援するNPO法人日本独立作家同盟初のインディーズレーベル『群雛文庫』創刊!電子雑誌『月刊群雛』掲載作からセレクトした5冊を電子書籍とオンデマンド印刷版で本日より発売開始!|NPO法人日本独立作家同盟のプレスリリース

 群雛文庫が創刊されました。嬉しいねえ。

 この価格でこういう質の短編を供給するってのは電子書籍でなければ出来ないことだよね。

 私がデビューした頃、手軽に短時間で読める作品を流通させられないかという実験がされたことがある。
 例えば90年から00年頃に瀬名秀明さんなんかが参加した400円文庫とか、さらには100円ショップ・ダイソーの100円文庫なんてのもあった。あの100円文庫には絵本だけでなく、推理モノや歴史物もあったと思う。というか、そのころお世話になった先生の門下の作家が結構それで頑張ってたのね。


 でも、結局、ムリなことはムリなんだよね。紙で印刷して製本して流通させるというと、かなり厳しい限界があるの。商業出版ってのは価格、流通、そして文章量をすべて吊り合わせて行う連立方程式なので、どれかを優先すれば、どれかが割りを食う。価格抑えて流通させるには文章量を削るしかない。それも半端なく削っちゃわないとムリ。そこでダイソーはメチャメチャ初版の数を増やすことでスケールメリットを図った。でも文章量制限されたので、読書の楽しみとしてはいささか物足りなかったかもしれない。
 400円文庫は内容も量もはしっかりしてたけど、400円では普通の文庫本とあまり差がない。手軽に買う、っていうにはまだ壁があった。

 そこでこの、200円で、質を保証しつつ、流通は電子とオンデマンドという形態は、その時の絶対に既存の紙ベースの商業出版ではできない未踏領域だと思う。個人で出す分にはもっと安いものがあるけれど、その分編集の手間をかけたり、セレクトされたりという質の保障はあまりないと思う。とくにそこは月刊群雛という母艦があるからこそできることだと思う。

 で、昔から1時間TVドラマってのは、推理作家やSF作家殺しと呼ばれていた。手間も時間もアイディアもかかる上にギャラが安いのでそう言われたらしい。でもその分視聴者はすごく楽しいのね。
今でもTVの1時間刑事ドラマは国内海外ともによく見られている。このTVの時代の終わりなのに、なんとドラマのストリーミングサービスでも見られている。やはり手軽に見られてそれなのにしっかり楽しいというパッケージはそこなんだと思う。作家はしぬけどね。
 
 そこで短編文庫というのもそれに近いものがある。きりりとしまった文章を好きなとき、好きにすっと読んで楽しい。これはまさに至福だと思う。大昔の星新一ショートショートなんかもこういう感じだったんだろうけど、短編小説、短編集はよほどの売れっ子以外は出せなくなっていった。ニーズがあるのに、その出版のリスクが嫌われて、リスク回避に売れっ子作家か、あるいは大きなバックボーンがあるところでのみやっていたような。

 とにかく若手作家が短編を発表する場が少ない状態だったので、まして短編がこうして長い短編集ではない、短編2本で1冊という形態というのは、電子でなければ出来ない。で、気に入ったら上でも手に入れられる。作家のファンになったらこれはたまらんよね。電子書籍は著者にサインしてもらえないけどこれだともらえる。これは嬉しいよね。

 その点で、このパッケージングとしての群雛文庫。その企画も正しいと思うし、また時機としても群雛がもうすぐ2年になるところでの創刊も正しいと思う。これより早ければ母艦である月刊群雛が安定しないし、これより後だとどっかが似たような企画をしてしまうかもしれない。
 それに、群雛出身といえるような群雛第2世代の作家も出てきているので、まさにいいタイミングだと思う。

 電子書籍だからできるしっかりした短編の単行本。群雛はまた、物語の歴史に一ページを刻めたんじゃないかな。

 今後がさらに楽しみだったり。


 ちなみに写真としてはこの場合ビールではなくウイスキーの水割りが絵的にカッコイイかなと思ったんだけどハポー酒(笑)。

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